世界1位!イタリアの世界遺産60個を地域別にご紹介・北部編

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引用:https://www.flickr.com/photos/gigi62/3909598872
観光スポットとして定番の世界遺産ですが、実はイタリアが世界で一番登録件数が多いというのはご存じでしたか?
古代ローマからの遺跡や、現代でもその面影を受け継ぐ都市の数々。そして雄大な自然など、世界遺産としてなんと60カ所が認定されているのです。
そして、特にそれら世界遺産が集中しているのが北部です。
その数は何と27カ所。イタリアの約半分の世界遺産が、北部で楽しむことができるのです。
また、北部の中でもミラノやベネチアなどの大都市だけに世界遺産があるのではなく、比較的まんべんなく分散しているのも特徴です。
スイスとの国境沿いの美しいアルプス山脈のふもとや、地中海に面したリグリア州。リゾートと言えば南部のアマルフィ海岸やシチリア島が有名ですが、風光明媚で見ごたえのある景色で言えば、北部も負けていません。
今回はそんなイタリア北部の世界遺産の中でも、特に一度は訪れておきたいオススメのスポットを厳選してご紹介いたします。
イタリア北部ってどんなところ?どんな見どころがあるの?という疑問にもお答えしますので、ぜひご覧ください。
一度は見てみたい中部イタリアの世界遺産の特徴とは?

引用:https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Genova_Palazzo_Reale_Esterno_Lato_del_Giardino_1.jpg
イタリアと言えば古代ローマからの遺跡が数多く残るイメージがあります。
もちろん北部イタリアにもそうした遺跡はあるのですが、どちらかと言うと北部の世界遺産は何らかの建造物やそれらの集合体、あるいは広大な自然やそこでの文化そのものなどが、登録されていることが多いようです。
かつて一大産業都市として栄えたフィレンチェにも近い北部には、言わずと知れたミラノやベネチア以外にも金融や工業で栄えた街が数多くあります。
そこで生まれた豪商や貴族たち、あるいは広大な自然を求めて居を構えた王族などによって、さまざまな美しい建物が建てられたという歴史が、現代で世界遺産として認められるといったケースが多いのです。
まさにイタリア北部らしい、そんな世界遺産について詳しく見ていきましょう。
ベネチアとその潟 (ベネチア)

引用:https://www.flickr.com/photos/franganillo/53049237376
なんだかんだ、北部と言えば欠かせない観光地が、水の都ベネチアです。
北部のみならずイタリア全土でも有数の知名度を誇るベネチアですが、この街そのものが世界文化遺産に登録されていることはご存じだったでしょうか。
しかもベネチアは、文化遺産として認定されるための全6項目すべてを満たす、世界でもとても珍しい場所なのです。
これはベネチアの他には中国の「莫高窟」と「泰山」だけ。優れた景観かつ伝統的な文化を伝え、なおかつ正しく保護・修復されているものだという証明でもあります。
ベネチアの歴史は古く5世紀ごろの民族大移動から始まります。
ゲルマン民族などによる破壊と略奪に対抗するため、当時のベネチア周辺に移住してきた人々は潟や湿地に無数の杭を打ち込み、その上に街を造り上げました。
環境を利用した天然の要塞都市国家として、ベネチアは強大な海運共和国に成長し、貿易によって巨万の富を成しました。
それらはビサンチン建築の大傑作サン・マルコ大聖堂や、ゴシック建築のドゥカーレ宮殿の建造につぎ込まれ、18世紀のナポレオン侵攻によってベネチア共和国が滅亡したのちも受け継がれ、現代に伝わっているのです。
ベネチア本島だけではなく、ベネチアンガラス発祥のムラーノ島や繊細なレースが特産のブラーノ島など、大小合わせて177の島が合わせて世界遺産として登録されています。
本当は常に多くの観光客でにぎわっていますが、ごく近隣にあるジュデッカ島などはほぼ住宅しかなく、のんびりとしたベネチアでの暮らしが垣間見える落ち着いた島。
こうしたラグーン(潟)の島巡りもベネチアの目玉の一つです。
しかしこれらの島々は、地盤沈下や地球温暖化による海面上昇などにより沈没の危機にあるともされています。
「沈みゆく街」とも呼ばれるベネチアの島々は、世界遺産として毎年多額の費用をかけて修繕され、その姿を保っているのです。
今に残るその優美な姿を、ぜひ一度ご覧になってください。
ただし、年々増え続ける観光客対策のため、2024年4月より観光のピーク時期には、4日前までの予約で5ユーロ、3日前以降は10ユーロの入島税が取られるようになりました。
日帰りの観光客のみが対象で、4月から7月の特定の日のみ、更に午前8時30分から午後4時までの時間に入島する場合に限られますが、あらかじめベネチア市入島税専用サイトにて予約が必須となっています。
これを忘れると罰金として50ユーロから300ユーロが課せられますので、課税の対象になるかも…という方はあらかじめご確認ください。
サンタマリア・デッレ・グラツィエ教会とドメニコ会修道院 (ミラノ)

引用:https://www.flickr.com/photos/36637154@N04/6312737335/
北部の中心都市・ミラノ。その中心部にあるサンタマリア・デッレ・グラツィエ教会(以下サンタマリア教会)は、15世紀にドメニコ会の修道院として建てられたもの。
この教会自体もゴシック建築とルネサンス様式が交じり合い、オレンジのレンガによる外観が美しい歴史的建造物ですが、この教会の目玉はなんといっても食堂の壁に描かれている、レオナルド・ダ・ヴィンチが手掛けた「最後の晩餐」でしょう。
ダ・ヴィンチは卵の黄身などに顔料をまぜて描くテンペラという技法と、古来からの油彩を組み合わせ、当時としては革新的な手法の遠近法と逆光を見事に駆使し「最後の晩餐」を描いています。
「モナリザ」に並ぶ知名度を誇るこの絵こそ、サンタマリア教会に多くの人が訪れる要因と言えるでしょう。
しかし、サンタマリア教会自体の6本の付柱と丸窓が印象的な正面からの見た目や、その奥にあるルネサンス様式の円蓋と鐘楼の優美さは芸術の街ミラノにふさわしい物。
また教会内部も中央の主祭壇は言わずもがな、左右対称に7つずつ配置された礼拝堂や祭壇画、アーチ装飾。また四方を回廊に囲まれた中庭には、小さいながらも爽やかな草木が生い茂り、ほっと息が漏れるような美しさです。
「最後の晩餐」を見るためには予約が必須なのですが、なんと3か月前のチケットがあっという間に売り切れてしまいます!
しかしサンタマリア教会自体は入場料やチケットは不要で、いつでも訪れることができます。
ミラノに旅行に行った際には、ぜひ一度はご覧になってください。
ヴァルカモニカの岩絵群

引用:https://www.flickr.com/photos/alandenney/44647263184
イタリア60の世界遺産の中で、一番最初に登録されたのがこのヴァルカモニカの岩絵群です。
アルプスの麓を流れるオーリオ川沿いの渓谷をヴァルモニカと呼ぶのですが、その地域の岩に掘られた約14万点にも及ぶ岩絵の数々が、世界文化遺産として1979年に登録されています。
これらは最古のものは約1万年前に彫られたものもあり、そこからローマ帝国時代のアルファベットが掘られたものまで約8,000年もの期間の生活や歴史を示す、貴重な資料となっています。
この地に住んでいたカムニ族の狩猟や儀式の様子、戦争や他民族との交流など様々なものがモチーフとなって描かれており、その出来栄えも最も古いものは線と線をつなぎ合わせたようなものですが、徐々に陰影や輪郭などがはっきりと描かれるようになり、中には色付けされたものもあります。
そうした時代による表現の変化が見て取れるのも、ヴァルカモニカ岩絵群の見どころです。
これらの岩絵を楽しみたいのであれば、ナクアネ岩壁彫刻国立公園がオススメです。
1955年に造られたこの公園は北イタリアならではの緑豊かな自然に加え、3キロほどの遊歩道で合計104もの岩絵を楽しむことができます。
広大な敷地面積を誇る公園ですので、訪れる場合は歩きやすい服装と靴をお忘れなく。
クレスピ・ダッダ (ミラノ・ベルガモ)

引用:https://picryl.com/media/crespi-dadda-unesco-adda-78d88f
イタリアにあるのは歴史の古い世界遺産ばかりではありません。
ミラノとベルガモにまたがるようにして存在する村、クレスピ・ダッダは19世紀末、産業革命によって大きく成長した綿織物の工場主クレスピ氏が造り上げた、自分の工場で働く労働者とその家族のための村です。
工場の目の前には、労働者の家庭菜園付き住居が規則正しく並べられ、更に彼らの家族のための学校や教会、病院や劇場に公衆浴場などが建てられ、なんと無料で提供されていました。
中には水力発電所まであったというのですから驚きです。
こうした企業による社会福祉は、当時としては他に類を見ない物でした。
クレスピ・ダッダは労働者のユートピアと呼ばれ、多くの人々が暮らしていましたが、残念なことに世界恐慌によって村は終焉を迎えることとなります。
工場は閉鎖されたものの、この地に愛着を持った一部の労働者はそのまま住み続け、現在でも彼らの子孫がこの村の一部で生活を送っています。
世界遺産ではあるものの、今もそうした住民が生活するクレスピ・ダッダ。訪れる際は私有地に入らないよう、注意が必要です。
19世紀の街並みはどこか懐かしく、それでいてイタリアの他の地域では見られない独特のものです。ミラノやベルガモからアクセスする際は、バスもあるものの本数は少ないのでタクシーを利用すると良いでしょう。
サヴォイア王家の王宮群 (トリノ)

引用:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:PalazzoRealeNotteTorino.jpg
ミラノ・ベネチアときて、北イタリアで3番目に名前が上がるのは恐らくトリノでしょう。
工業都市として今でも賑わいを見せるこの街は、かつてサヴォイア公国によって都に定められ、発展しました。
特に16世紀末には、この地にサヴォイア王家による宮殿や城をいくつも建てようという都市計画が実施され、当時のイタリアで最も力のあった建築家や美術家がこの地に集い、数々の華麗な建造物を造り上げました。
それらの多くは戦争を乗り越えて現在に伝わり、今なお博物館や公的機関の施設として一般に公開されています。
特に有名なのは、やはりトリノの中心地にあるサヴォイア王宮と庭園です。左右対称に造られた白色の王宮は、トリノの街のシンボルとして愛されています。
正面からの見た目もさることながら、裏手に広がる庭園は木々が生い茂り、いくつものオブジェや彫刻、噴水が楽しめる憩いの場です。
また王宮内は当時の様子を残す豪華絢爛なもので、シャンデリアやフレスコ画、調度品や大理石の柱など、まさに王族の住まいそのものです。
奥にはサヴォイア家コレクションの武具を展示した博物館もありますが、それらも王宮の品位を落とさぬよう美しく並べられ、無数の鎧や馬の模型などで飾られています。
地下には考古学博物館などもあり、これらはヨーロッパ全土を見渡しても最も古い博物館の一つに数えられています。
この王宮以外にもバロック様式で建てられたカリニャーノ宮殿や、2006年のトリノオリンピックの際に委員会のラウンジとして利用されたマダマ宮殿。
真っ白な大理石の回廊が美しいヴェナリア宮殿など、サヴォイア家が建てた王宮群はそのどれもがトリノの栄光を伝える素晴らしい物ばかり。
かつての王族の優美な暮らしぶりを追体験できる、トリノならではの人気スポットです。
ポルトヴェーネレ・チンクエ・テッレ及び小島群

引用:https://www.flickr.com/photos/blackrockphoto/3443563010
イタリアの海と言えば、やっぱり南部のアマルフィ海岸やシチリア島が人気です。
あるいは水の都ベネチアも外せないスポットですが…北部の左手側にあるリグリア州のポルトヴェーネレとチンクエ・テッレこそ、知る人ぞ知るイタリアの美しい海岸線の街々です。
といっても、そこに行くのは少々大変。なぜなら街は海岸線ぎりぎりの、険しい崖に張り付くようにして造られているからです。
もともとはノルマン人やイスラム教徒などの外敵から身を守るために造られた天然の要塞都市ですが、その美しさはかのミケランジェロが、「この地上に楽園が存在するとするならば、それはチンクエ・テッレだ。」と称したほど。
現代では並び立つ家々が赤やオレンジ、白やクリームなどカラフルに塗られ、青い空と海、そして緑の山々と素晴らしいコントラストを生み出しています。
そのあまりの素晴らしさから、ポルトヴェーネレは「ヴィーナスの港」、チンクレ・テッレは「リヴェリアの真珠」と呼ばれ、多くのイタリア人のあこがれの土地となっています。
そんなポルトヴェーネレとチンクエ・テッレが日本ではあまり知られていないのは、やはりその立地によるアクセスの悪さでしょう。
平地がほとんどなく、かつては船でしかアクセスできなかったというこの土地に訪れるには、フィレンチェからは列車で2時間半ほど。ジェノヴァからなら1時間半ほどかかります。
また村と村を結ぶ道路はグネグネと蛇行しており、車での観光はあまりオススメできません。しかしこの地を走る列車を利用すれば、ほぼまっすぐの海沿いの線路を、景色を楽しみながら移動できます。
4月から11月初旬は、観光船が運航していますのでそちらを利用するのもいいでしょう。
ちなみにこの土地は平地が少ないため、普通の農耕には不向きでした。
しかし強い日差しや海・石垣からの照り返し、大きな寒暖差や水はけの良さ、そして弱酸性の土壌といった環境は、ワインのブドウ栽培に最適で、この地で造られたシャケトラというワインは濃厚な甘みと香りから王侯貴族に愛され、ジェノヴァの誇りと呼ばれたほどのものです。
日本でも高級ワインとして愛されるシャケトラを、美しい街並みの中でゆっくりと楽しめば、北イタリアの最高の思い出になることでしょう
まだまだ日本での知名度は低いものの、イタリア国内からの観光客は年々増えつつあるポルトヴェーネレとチンクエ・テッレ。
訪れるならできるだけ早めがいいかもしれませんね。
サンマリノ歴史地区とティターノ山

引用:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:San_Marino_castello_2.jpg
イタリアの中にある独立国家と言えば、バチカン市国はあまりにも有名。
しかし実はイタリア北部、標高700メートルのティターノ山の上に建設されたサンマリノも、共和国として認められた独立国家なのです。
この国の象徴ともいえるのが、ティターノ山に造られた3つの砦です。これらはサンマリノを表すモチーフとして、切手やコインなどにも描かれています。
この砦から見えるサンマリノとその周辺の風景は、絶景スポットとして有名です。この国にはあまり観光名所と呼べるところはないのですが、この光景だけでも多くの観光客を呼び込み、GDPの50%以上が観光業によるものです。
ちょっと変わったスポットとしては、サンマリノ神社が挙げられるでしょう。
ここはなんとヨーロッパで唯一、日本の神社本庁が認めた神社。祭られている神も天照大御神(アマテラスオオミカミ)で、本田の一部には伊勢神宮の木材が使用されたりもしています。
鳥居にはカタカナと漢字で「サンマリノ神社」と書かれており、なんとも不思議な雰囲気。
この神社は2011年に発生した東日本大震災の犠牲者を追悼するために建立されたもので、日本とサンマリノの絆を表すものでもあります。
なんだか不思議な国だな…と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、サンマリノが多くの観光客を呼び寄せられる要因はまだあります。
それはなんと、消費税が0%ということ!
これはもちろん観光客にも適用されますので、サンマリノで買う物はすべて免税となります。さらにイタリアからサンマリノに訪れる際にはパスポートなどは必要ないので、さまざまなものが安く買えるとして、多くのイタリア人がショッピングにサンマリノを訪れているというわけです。
小さな国ながら4つ星ホテルも数多くあり、ちょっと珍しい旅行をしたいという人にはうってつけの国、サンマリノ。
ぜひイタリア旅行のついでに、訪れることを検討してみて下さい。
北部イタリアの見逃せない世界遺産のまとめ

引用:https://www.flickr.com/photos/gigi62/1365218963
今回はイタリアの北部にある、さまざまな世界遺産についてご紹介しました。
しかしなにせ30近くもある世界遺産の魅力は、なかなかすべて書き記せるものではありません。
今回ご紹介しきれなかった世界遺産の中には、ジェノヴァにある貴族たちが建てた現代的な邸宅群(パラッツィ)や、モザイクが美しいラヴェンナにある初期キリスト教の建築群などの建造物系のものもあれば、アルプスの山々と氷河、そして広大な牧草地などが美しいドローミティなどの自然遺産などバリエーション豊かなものばかり。
イタリア旅行をする際、ついつい中部のローマやフィレンチェ、南部のナポリといったところに目移りして、北部はベネチアとミラノくらいでいいか…となりがちですが、こうして世界遺産に目を向けてみると、私たちの知らないイタリアの魅力がこれでもかとばかりに見えてきます。
ぜひ今回の記事を参考に、知られざる北部イタリアの旅の計画を練ってみて下さいね。