土地の相続税はどの程度かかるのか?算出方法や控除の内容・減税の方法も解説
- 更新日:2024.09.24
土地を相続した際の相続税はどのくらいかかるのでしょうか?
また、相続税や固定資産税の節税のための土地活用方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
本記事では、不動産にかかる相続税の概要や算出方法、利用できる控除と種類の条件などを解説します。
また、相続税対策にもなる土地の活用方法も紹介するので、まとまった不動産を相続する予定がある方や、土地活用の方法を探している方は参考にしてください。
この記事で分かること
- 土地にかかる相続税額・計算方法
- 相続税対策にはどんなものがある?
- 相続税対策としての土地活用
相続税や固定資産税の節税のための土地活用方法には様々な方法があります。
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土地にかかる相続税の概要と特徴
相続税とは、被相続人(故人)名義の現金・不動産・有価証券・貴金属などの遺産を受け継いだ際、その額が大きいとかかる税金です。
ここでは、不動産にかかる相続税の概要と特徴、相続税がかかる場合とかからない場合の事例を紹介します。
土地・家屋・権利全てに相続税がかかる
不動産は資産価値がある「財産」とみなされ、土地と家屋の両方が課税対象です。例えば、一戸建て住宅を相続した場合、土地+建物の価値で相続税を計算します。
また、借地権や地上権といった「権利」にも相続税が発生します。そのため、相続を行う場合は被相続人がどのくらい不動産を所有していたのか確かめる必要があります。
所有している不動産の種類や数、広さを確認したい場合は、固定資産税の納税通知書か、不動産登記を確認しましょう。
資産が多いときにのみ相続税は課税される
相続税には、「3000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除があり、相続する財産の価値が基礎控除の範囲内であれば相続税はかかりません。
例えば、現金で100万円、土地と建物合わせて3600万円の価値があると判断された不動産を1人の相続人が受け継いだ場合、(3600万円+100万円)-3600万円=100万円となり、この100万円に対して相続税が課せられます。
法定相続人が複数いる場合は遺産も分割されるので、相続税がかからない場合も多いのです。
ただし、不動産の価値は土地の広さ、土地がある場所、土地の使用用途などよって変わってきます。
需要が低い場所の土地は広くても価値が低く、需要が高い土地は狭くても価値が高いほか、条件次第で価値が急激に上がる場合があるので、正確な算出が必要です。
土地の相続税評価額を計算する方法
土地の値段は、「一物四価」と言われ、同じ土地でも売買や相続など目的に応じて評価額が異なります。
相続税を計算する場合、相続税評価額を用います。
ここでは、相続税評価額の概要や一戸建て、更地、マンションやアパートなどの集合住宅の相続税評価額の出し方を紹介します。
相続税評価額とはどんなもの?
相続税評価額は、文字どおり不動産を相続した際に支払う相続税を算出するために用いられる評価額です。
土地の売買に使われる「時価」とは差があり、相続税評価額のほうが低くなります。
相続税評価額は「路線価方式」と「倍率方式」のどちらかで算出します。
路線価で土地の相続税評価額を計算する方法
路線価とは「道路に面する土地1㎡あたりの評価額」です。
国税庁が毎年7~8月頃に発表し、相続税のほか贈与税を計算する際に用いられます。
路線価は国税庁の「路線価図・評価倍率表」から調べられます。
出典:国税庁
路線価が示されている土地の相続税評価額を算出する方法は、以下のとおりです。
「評価額=路線価×補正率×土地相続税面積(㎡)」
補正率とは、価値が低い土地に対して評価を下げるための利率であり、こちらも国税庁のホームページ内から確認できます。
出典:国税庁
倍率方式で相続税評価額を計算する方法
路線価は主に都市部で設定されており、郊外に行くほど路線価が設定されない土地が増えていきます。
路線価が設定されていない土地の相続税評価額を計算するには、倍率方式を用います。
倍率方式の計算式は「固定資産税評価額×倍率」です。
固定資産税評価額は、自治体から毎年送付される「固定資産税課税明細書」に記載されています。
倍率は国税庁のホームページに記載されています。
出典:国税庁
自宅が建っている状態の土地の場合
自宅の相続税評価額を計算する場合、「固定資産税評価額×1.0倍」と相続税評価額の算出方法が決められています。
ですから、「固定資産税課税明細書」を確認すればすぐに評価額がわかります。
例えば、固定資産税評価額が1500万円の場合は、相続税評価額は1500万です。
更地の場合
更地の場合は、路線価方式と倍率方式の両方で計算できます。
路線価で計算する場合は、路線価×補正率×土地相続税面積(㎡)の計算式を用いましょう。
倍率方式の場合は固定資産税評価額×倍率で計算してください。
なお、更地の場合は正確な計算方法が難しいため、相続に詳しい税理士などに算出を依頼するのがおすすめです。
マンションやアパートが建っている土地の場合
被相続人が、賃貸マンションやアパートを建てて運営していた場合、相続税評価額は以下のような計算式で算出します。
「固定資産税評価額×(1-借家権割合(30%)×賃貸割合)」
借家権割合とは借り手側が家屋を借りて使用する権利の割合であり、一律30%です。
賃貸割合とは賃貸に出している床面積の割合であり、割合が大きいほど相続税評価額は下がります。
ただし、賃貸物件を経営していたが被相続人が死亡したときに長らく空き家であり、賃借人が入っていなかったといった場合は、貸家権利割合が適応されないので注意してください。
なお、更地を第三者に貸して別名義の建物が建っていた場合の評価額は「更地の評価額×(1-借地権割合)」で計算します。
建物全てを第三者に貸していたという場合の相続税評価額は、「固定資産税評価額×(1-借家権割合)」で計算します。
この場合でも借家権割合は30%となります。
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相続税の算出方法
ここでは、不動産を含む遺産を相続した場合、相続税の算出方法を解説します。
正確な算出は税理士など専門家に依頼するのがおすすめですが、おおよその金額だけでも算出する方法を理解していれば、何かと役立つでしょう。
遺産総額を算出する
はじめに、遺産の総額を算出します。
遺産には現金や不動産、貴金属といったプラスの遺産のほか、借金やローンなどマイナスの遺産もあります。
遺産総額は、プラスの遺産からマイナスの遺産と葬祭費用の控除分を引いて算出してください。
なお、住宅ローンが残っている場合は、団体信用生命保険に加入しているなら支払われた生命保険でローンの残高を相殺できます。
しかし、団体生命保険に加入していない場合は住宅ローンも相続人が引き継がなければなりません。
この場合、住宅ローンはマイナスの遺産として差し引けます。
また、死亡退職金や生命保険は「500万円×法定相続人の人数」まで非課税です。
ですから、非課税金額内の死亡退職金や生命保険を遺産に含める必要はありません。
遺産総額が算出できたら、そこから「3000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除を引いて出てきた金額が、課税遺産総額です。
この金額が0,もしくはマイナスの場合は相続税がかかりません。
ちなみに、法定相続人の人数は法律に定められた人数であり、遺産を放棄した人数も含まれます。
基礎控除額を差し引き相続税の額を算出する
相続税の税率は、以下の表のとおりです。
金額 | 税率 | 控除額 |
1000万円以下 | 10% | なし |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続税の税額は、課税遺産総額×税率で算出します。
例えば、課税遺産総額が500万円の場合は 500万×10%=50万円です。
課税額が1000万円を超える度控除額が付くので、産出額から差し引いてください。
課税遺産額が多くなるほど税率も高まっていきます。
実際に財産を取得した割合に応じて税額を算出する
法定相続人が複数いる場合、遺産は遺言書、もしくは法律に沿った割合で分割されます。
例えば、法定相続人が被相続人の配偶者と子どもが2人の場合、遺言書がなければ配偶者に2分の1,子ども2人に4分の1ずつ分割相続されます。
この取得した割合に応じて税額を算出しましょう。
なお、配偶者の場合は相続税に関する特別控除も受けられますが、それについては後ほど算出します。
土地の相続税対策にはどんなものがある?
ここまで、土地の相続税がかかる場合と算出方法に関して説明してきましたが、相続税をなるべく抑える方法として以下が挙げられます。
- 土地の有効活用
- 土地の分割
- 相続税専門家に相談する
- 各種控除や小規模宅地等の特例の活用
ひとつひとつ詳しく見ていきましょう。
土地の有効活用
土地を有効活用することで、土地の評価額を下げることができます。土地の評価額が下がると相続財産の価額も下がるため、相続税も安くなります。
具体的には、以下のような方法があります。
-
賃貸アパートやマンションを建てる
土地に賃貸アパートやマンションを建てることで、建物の評価額が土地の評価額を下回る場合があり、相続税を減税することができます。ただし、建物の建築には費用がかかりますし、建物の管理や修繕なども必要になります。
-
駐車場にする
土地を駐車場にすることで、土地の評価額を下げることができます。ただし、駐車場の需要は地域によって異なります。また、駐車場の管理も必要になります。
-
農地として貸し出す
土地を農地として貸し出すことで、土地の評価額を下げることができます。ただし、農地の借手を見つけるのが難しい場合がありますし、農地の管理を行う必要があります。
土地の分割
土地を分割することで、土地の評価額を下げることができます。
土地の評価額は、土地の面積が大きくなるほど高くなります。
そのため、土地を分割することで、土地の面積を小さくすることができます。
ただし、土地を分割する場合には、以下の点に注意する必要があります。
-
道路に接する土地
土地を分割する場合、各土地が道路に接している必要があります。
-
最低面積
土地を分割する場合、各土地の面積が一定以上ある必要があります。
-
建物の建築
土地を分割する場合、各土地に建物を建てることができる必要があります。
相続税専門家に相談する
土地の相続税対策は複雑なため、相続税専門家に相談する方法もあります。
相続税専門家は、土地の評価額を算定したり、相続税対策をアドバイスしてくれるので、難しくてわからなかったり調べるのが大変な人は専門家に聞いてしまった方が早いかもしれませんね。
<相続税専門家に相談するメリット>
- 土地の評価額を正確に把握できる。
- 効果的な相続税対策を講じることができる。
- 不安や疑問を解消できる。
<相続税専門家を選ぶポイント>
- 経験豊富な専門家を選ぶ。
- 自分の状況を理解してくれる専門家を選ぶ。
- 費用が明確な専門家を選ぶ。
各種控除や小規模宅地等の特例の活用
一定の条件を満たす土地について、いくつかの控除を受けることができます。 以下に主な控除を記載します。
- 基礎控除
- 配偶者の税額軽減
- 贈与税額控除
- 未成年者控除
- 相次相続控除
また小規模宅地等の特例は、一定の条件を満たす土地について、相続税評価額を最大80%まで減額する特例です。
この特例を活用することで、土地の相続税を大幅に節税することができます。
こちらに関しては、次の章で詳しく紹介します。
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相続税の減税に使える控除と特例
相続税は現金だけでなく住んでいる家や持っている土地にもかかってくるので、いくつもの控除や特例が設けられています。
ここでは、相続税の算出をする際に知っておくべき控除や特例を紹介します。
基礎控除
相続税の基礎控除とは、遺産総額から一律で差し引くことができる金額です。
「3,000万+600万×法定相続人の数」で計算でき、法定相続人の数が多いほど基礎控除の額は増えていきます。
なお、相続放棄を選択した方も法定相続人の人数からは除外されません。
配偶者の税額軽減
被相続人の配偶者は、法定相続内の範囲内で財産を相続した場合から1億6,000万円まで相続税が非課税になります。
例えば、被相続人が5億円の遺産があり、法定相続人が配偶者と子ども2人だった場合、配偶者は法定相続の範囲内となる2億5000万円までは非課税です。
ただし、1億6000万円以上の遺産を相続し、さらに法定相続の範囲内を超える金額だった場合は超えた分に対して相続税がかかるので注意しましょう。
贈与税額控除
贈与税控除とは、被相続人が亡くなる3年以内に生前贈与を受けた場合、相続財産と合算して計算することで、相続税と贈与税の二重取りを防ぐ制度です。
贈与税控除は自分で申告しないと適応されないので、生前贈与を受けた場合は贈与を受けた額、時期、支払った贈与税の額などを記録に残しておきましょう。
未成年者控除
未成年控除とは法定相続人が18歳未満の未成年だった場合、相続税の額から一定額を控除できる制度です。
控除額は「(18歳-相続時の年齢)×10万円」で計算できます。
相次相続控除
相次相続控除とは、最初の相続が発生してから10年以内に次の相続が発生した場合に相続税額から一定額を差し引ける控除です。
被相続人が父親、遺産の半分を父と同年代の母親が相続した場合、母親がそれほど間を置かずに亡くなる可能性もあるでしょう。
その際、法定相続人になった子どもは短期間に何度も相続税を現金で支払わなければなりません。
ただし、この控除は1度目の相続の際に相続税を納めていることが条件です。
例えば、父が亡くなったときに母が財産を相続したけれど「配偶者の税額軽減」を利用して相続税が非課税だった場合はこの制度は使えないので注意しましょう。
この他にも、相次相続控除を利用するには複数の条件が必要なので、控除額の計算を含めて相続税に強い税理士などに相談するのがおすすめです。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、「被相続人が居住していた家(特定居住用宅地等)」「被相続人やが事業を行っていた土地(特定事業用宅地等)」「被相続人などが貸していた土地(貸付事業用宅地等)」の3つに適応される土地の評価額を減額できる特例です。
減額できる割合と土地面積は以下のとおりです。
土地の種類 | 適応できる面積 | 減額率 |
特定居住用宅地等 | 330㎡まで | 80% |
特定事業用宅地等 | 400㎡まで | 80% |
貸付事業用宅地等 | 200㎡まで | 50% |
小規模宅地等の特例を利用すれば、土地にかかる相続税を大幅に減額できます。
「相続税対策に土地活用が有効」といわれるのは、この特例が利用できるためです。
例えば、何も利用していない更地を相続させるより、駐車場や貸家を運営したほうが相続税が減額できます。
相続税の申告時期とタイミング
相続税は、申告時期と納税期限が定められています。
ここでは、相続税の申告時期と方法を紹介します。
まずは相続登記が必要
不動産を相続する場合、相続登記が必要です。
相続登記とは、被相続人名義だった登記の名義を相続人の名義に変更する手続きです。
対象不動産の所在地を管轄する法務局での手続きが必要なので、複数の都道府県に土地を所有している場合、不動産の所在地を管轄する法務局まで手続きに行く必要があります。
自分でおこなうことも、司法書士や弁護士などに代理申請してもらうことも可能です。
なお、2024年4月1日より相続登記が義務化されました。
相続登記が必要な状態であるにもかかわらず、正当な理由なく相続登記を行わない場合、10万円以下の過料が科せられる可能性もあります。
相続開始から10か月以内に
相続税の申告、もしくは納付の期限は被相続人が亡くなったと知った日から10か月です。
10か月以内に、遺産の総額を調べて課税額を算出し、遺産をどのように分配するか決めなければなりません。
もし、申告期限を過ぎてしまうと控除や特例が受けられない、延滞金が付くなとさまざまなデメリットがあります。
遺産の分割方法が決まらないなど納税が難しい場合は申告だけでもしておきましょう。
相続税の支払い方法は原則として現金です。
土地活用において相続税を減税するときの3つの注意点
土地は所有しているだけで固定資産税がかかります。
また、相続税は原則として現金で支払わなければなりません。
何も使っていない土地を相続すると相続税が高額になるだけでなく、相続税を支払うために現金が必要になります。
相続税支払いのために土地を売る方法もありますが、急いで土地を売却すると相場より低い金額でしか売れないおそれもあります。
したがって、相続税対策として土地活用がおすすめです。
ここでは、相続税をはじめとする節税対策として土地活用をする際の注意点を紹介します。
土地活用を行う目的を明確にする
土地活用の目的は、相続税対策だけではありません。資産価値の向上や収益の確保など、様々な目的があります。
土地活用にはさまざまな方法がありますが、特に共通して言えるのは収益性を意識することが大切です。
代表的土地活用はアパートやマンション、一戸建てを建てて賃貸物件として貸し出す方法ですが、そのほかにも、駐車場経営、テナントビルの貸し出しなどがあります。
土地活用を成功させるには、その地域の需要にあったものに土地を活用することが大切です。
そのためには、土地活用を得意とする不動産業者によく相談しましょう。
土地活用をしたが赤字続きだとかえって資産を減らしてしまいます。
対策を始めるのが早ければ早いほど節税効果が見込める
相続税をはじめとする節税対策で土地活用をする場合、早い時期に活用を始めるほうが高い節税効果が見込めます。
高齢になり、相続の話し合いをするようになった段階で土地活用を始めるのではなく、使い道が定まっていない土地ができた時点で、土地活用を考えましょう。
早く土地活用を始めるほど、固定資産税なども節税できるようになり、子どもや孫に資産を残せます。
長期的な視点で考える
土地活用は、専門知識も必要で、初期費用をはじめ建物の管理や修繕などのランニングコストが発生したり、空室リスクや災害リスクがあったりと、一朝一夕で効果がでるものではないため、長期的な視点で考えることが重要です。
安定した収益が将来得られるように計画を綿密に練るようにしましょう。
まとめ:不動産を資産として所有しているなら相続について考えておく
不動産は現金と比べて相続する際に評価額を出したり相続したりする際に手間がかかります。
特に、自宅以外の不動産を所有している場合は相続税対策として早めの土地活用を検討しましょう。
また、相続の際に利用できる控除や特例も調べておくことが大切です。
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