空き家を相続したらどうする？知っておきたい手続きと対策

空き家問題の現状

参照：総務省・令和５年住宅・土地統計調査住宅数概数集計（速報集計）結果

空き家問題は日本全国で深刻化しており、相続に関するリスクも懸念されています。総務省が2024年4月30日に発表した住宅・土地統計調査では全国の空き家が900万戸にのぼることがわかりました。

総住宅数に占める空き家の割合を示す空き家率も13.8%で過去最高を更新しました。空き家問題の現状は高齢化が主な要因ですが、両親の死後に実家の相続に関する手続きも複雑化しているという点も問題視されています。

空き家相続のリスクとは？

実家として家族で住んでいた家を相続すると、資産価値がある場合には相続登記を行い、現金化することで遺産分割がしやすくなります。

しかし、賃貸に出す場合には家賃収入を得られますが、リフォームや管理に注意が必要です。

資産価値がない場合には、周辺地権者や不動産会社、自治体などに引き取ってもらう方法がありますが、現金化することは難しいでしょう。

解体して他の活用方法を検討する場合は、全て自分で対応することは不可能なため専門家に相談してから解体を検討する必要があります。

この様に、空き家を相続した場合は放置せず適切な対策を取ることが大切です。近年、空き家を狙った事件が発生しているので相続した空き家を放置すると、防災や衛生、近隣への悪影響などが生じる可能性があります。定期的な巡回や適切な管理を心掛けましょう。

参照：国土交通省・空き家等の現状について

空き家を相続したらどうする？

空き家を相続した場合の手続きや計算方法について解説していきます。

相続手続きの基本

空き家を相続する場合は、相続登記や相続税の納付など、さまざまな手続きをおこなう必要があります。

相続発生後は法事などの手続きも発生し、気付いたら手続きができる期間が過ぎていた！という場合も少なくありません。

そうならないためにも、相続手続きは期限と、どの手続きを自分で行い、どの手続きを専門家に任せるかを決める必要があります。

相続前

親が子に実家を相続させたい場合には、事前に実家の片付けをおこなう事で資産価値の低下を防ぐことができ、売却などもスムーズに進みます。

相続される子どもの場合は、相続発生後から実家の片付けや手続きをおこなうよりも、事前に実家の必要な物、そうではない物を分け片づけを準備しましょう。

片付けには、主に自分で対応する場合と不用品回収業者などの業者に依頼する場合があります。

自分で対応する場合は、まず整理する項目をリストアップし、必要な清掃用具やゴミ袋などの準備をしましょう。

不用品は「売れるもの」「寄付できるもの」「廃棄するもの」に分け、可能な限りリサイクルやリユースを心がけることが大切です。

業者に依頼する場合は料金は発生しますが重いものや大量の不用品も一度に処分できるところが強みです。専門的な知識を持つ業者による適切な処理が期待できます。

片付けに関して詳細を知りたい方は以下記事にて解説していますので参考にしてみてください。

相続開始

親が亡くなると相続手続きが必要になります。

• 遺言書の確認
• 相続人の確認
• 相続財産の調査

相続の発生には、これらを確認する必要があります。３ヶ月以内に相続財産を単純承認や限定承認、または相続放棄の手続きが必要です。

相続手続きは自分で行うこともできますが、法律や税務、登記などに関する専門家に依頼することもできます。

• 弁護士は法律に関わる手続きを、税理士は相続税に関する相談を、司法書士は登記に関する相談を依頼するのがよいでしょう。
• 相続手続きにかかる費用は、自分で行う場合は最低3,000円～、専門家に依頼する場合は10万円～が目安です。

その他の手続き

相続においては、さらに10ヶ月以内に以下の手続きが必要になります。

• 遺産分割協議
• 相続財産の名義変更手続き
• 相続税の申告・納付

これらが必要になります。相続税は、相続によって得た財産に対して算出され、10ヶ月以内に申告・納付が必要です。

相続放棄の場合には相続の開始から3ヶ月以内に手続きを行います。

相続放棄をすると、その人は初めから相続人でなかったものとされ、トラブルの原因になることもあるため、注意が必要です。

空き家を相続する場合、遺産分割協議と相続登記の手続きが必要です。遺産分割協議では相続人全員が協議し、相続財産の分割方法を決定します。

相続登記は法務局に申請し、土地・建物の登録免許税を納付します。相続登記は2024年4月1日から義務化されているので、注意しましょう。

相続税の計算方法

ここでは、相続税の計算方法について、説明していきます。

建物と土地で金額が異なる場合

建物部分の相続税評価額は「固定資産税評価額×1.0」です。土地部分は自用地評価額で、路線価方式または倍率方式で計算します。

路線価方式

「路線価×各種補正率×土地面積」

路線価とは「道路に面する土地1㎡あたりの評価額」のことです。路線価は国税庁のホームページ「路線価図・評価倍率表」で確認できます。

倍率方

「固定資産税評価額×倍率」

固定資産税評価額は市町村から送られてくる「固定資産税課税明細書」に記載されている土地の価格で確認できます。倍率は路線価と同じように国税庁のホームページ「路線価図・評価倍率表」で確認できます。

参照：国税庁・財産評価基準書 路線価図・評価倍率表

相続放棄の手続きとメリット

相続放棄をする場合、親が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で申述する必要があります。相続放棄をすると、被相続人のすべての遺産を相続できなくなり、空き家の所有者にもなりません。

相続放棄をすることで、固定資産税や管理維持のための手間や費用が発生しなくなります。

実家を相続しても、売れるか売れないかの心配をしなくて済むのは大きなメリットと言えます。

空き家を相続する際の注意点

スムーズに空き家を相続できるのが理想的ですが、トラブルに発展するケースは少なくありません。法律に関する知識も必要なるため慎重に進める必要があります。

相続人同士のトラブル

空き家を相続する際、相続人が複数いる場合は、全員で空き家をどうするかを話し合いましょう。

実家を相続する場合や、空き家を相続する際にトラブルになる原因に

• 生前に1人だけ多額の贈与を受けた
• 両親の介護負担の割合
• 遺言書の内容が不平等

など、相続人同士の間でトラブルに発展する場合は少なくありません。話し合いで解決しない場合には弁護士に相談するのが良いでしょう。

紛争解決は弁護士の専門分野であり、代理人としても依頼できるため迅速に対応してくれるでしょう。

この様なトラブルにならないためにも、実家に住んでいる家族が元気なうちに相続の話や、実家が空き家になった場合について話し合える環境が大切です。

法令遵守

空き家を相続する際には、法令遵守が必要です。

空き家を相続する際、相続人が複数いる場合は、全員で空き家をどうするかを話し合いましょう。遺産分割協議を行って、空き家を相続する人を決めます。

遺産分割協議には法的な手続きがあるので、法律に基づいて進めましょう。

小規模宅地の特例を活用する

亡くなった人が居住用や事業用に使っていた宅地を相続した場合、小規模宅地等の特例を利用できる可能性があります。特例を適用することで相続税評価額が最大80%減額されます。

これは、高額な税負担によって自宅を手放さなければならない事態を回避し、配偶者や同居の子供など遺された家族が自宅に住み続けられることを目的に創設されています。

特例の条件を確認し、適切に手続きを進めましょう。

参照：国税庁・相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例（小規模宅地等の特例）

売却による譲渡所得税の特別控除を考慮する

相続した空き家を売却する場合、譲渡所得税がかかることがあります。特別控除を受けることで譲渡所得税の負担を軽減できます。

特別控除の条件を満たす場合、売却についても法令遵守で進めましょう

この様に、法的な規定に基づいて、適切な手続きを行いましょう。

専門家の活用

相続には法的な手続きや税金の問題が絡むため、弁護士や税理士など、専門家のアドバイスを受けることでスムーズに進められます。
ぜひ活用するようにしましょう。

相続税対策

空き家を相続する際には相続税がかかることがあります。相続税の計算や軽減策について、税理士や相続専門家に相談しましょう。

効果的な相続税対策として以下の4点が挙げられます。

• 生命保険の契約
• 生前贈与を行う
• 小規模宅地等の特例を利用し、不動産評価額を下げる
• 死亡退職金の非課税枠を活用する

遺産分割協議

相続人が複数いる場合、法廷相続人全員で亡くなった人の財産を分割する方法や割合について話し合うことを遺産分割協議といいます。

話し合った結果を残した書面のことを遺産分割協議書といいます。

弁護士に相談することで、遺言書の有効性・無効性の判断や、相続財産管理や運用に関するアドバイス、相続人の利益を最大化するための策の提案などをしてもらえます。

相続登記

空き家を相続したら、相続登記を行って名義を変更する必要があります。不動産登記の専門家に相談して手続きを進めましょう。

空き家にはさまざまな活用方法があります。売却するか、賃貸に出すか、リノベーションして住むかなど、選択肢を検討しましょう。

自身で判断するのが難しい場合は、相続専門家に相談してください。適切なアドバイスを受けることで、トラブルを回避できます。

空き家の相続については、専門家の知識と経験を活用してスムーズに進めましょう。

空き家の管理と活用方法

ここでは空き家を管理するポイントや、空き家の具体的な活用事例について解説していきます。

空き家の管理方法

空き家をそのままにするのではなく適切に管理することで、賃貸する場合にもスムーズに手続きに進めます。ここでは空き家を管理するための方法を詳しく説明します。

ポストの点検

空き家のポストにはチラシやダイレクトメールが投函(とうかん)されることがあります。ポストからあふれた郵便物を放置せず、定期的に点検してください。また、ポストをテープで止めることは避けましょう。

ポストの点検の頻度は最低でも月一回が推奨されます。しかし、以下の場合はチラシ以外にもゴミなどを入れられる可能性もあるため、頻度を増すことを検討しましょう。

• 人通りが多い
• 駅や繁華街から近い
• 過去にいたずらなどの迷惑行為を受けた

換気

空き家は湿気がたまりやすいため、定期的な換気が必要です。窓を2ヶ所以上開けて外気を入れ替え、クローゼットや押入れも忘れずに換気を意識してください。

換気の頻度は１度に60分程度で、全ての窓を開け空気の入れ替えをする以外にも、台風や大雨の前後には湿気による建物の傷みに注意する必要があります。

具体的な換気方法：窓を開けたうえで扇風機やサーキュレーターを使い部屋全体の空気を入れ替えます。雨が多い季節は湿気剤を使うなど対策しましょう。

水回り

水回りのチェックは定期的に行うことが必要です。

定期的に水道メーターを確認し、異常な水量の変化がないかチェックしましょう。漏水している可能性がある場合は、専門業者に依頼して修理を行いましょう。
また蛇口が確実に閉まっていることを確認したり、排水口の清掃を定期的に行うようにしてください。

雨漏りの確認

雨漏りは壁や畳のカビ発生や木造部分の腐食を引き起こす原因となります。
屋根を点検し、屋根瓦のズレや破損や樋の詰まりがないか、定期的に目視で確認します。

壁紙の剥がれやシミをチェックして、雨漏りの有無を確認が必要です。

また窓枠のシーリングが劣化していると、そこから雨水が侵入する可能性があるため、定期的に確認するようにしましょう。

庭の手入れ

庭木や雑草の処理を怠らないようにしましょう。庭の雑草は害虫の発生を招く原因になります。近隣トラブルを避けるため、庭の手入れを定期的に行いましょう。

雨樋(あまどい)や外壁の確認、近隣の変化、防犯上の管理も重要です。空き家は犯罪のリスクもあるため、注意深く管理しましょう。

これらの方法を実践することで、空き家の老朽化を遅らせ、良好な状態を維持できます。

空き家を活用する具体的な方法

空き家を活用する方法は多岐にわたりますが、以下に具体的な方法とそれぞれのメリット・デメリットを紹介します。

現状の建物を利用する

空き家をそのまま居住用として賃貸に出す方法です。初期投資が少なく、すぐに収益を得られるのがメリットです。

しかし、老朽化したり、耐震基準を満たしていない場合、相応の費用がかかることがあります。周辺の競合物件に勝る魅力を持たせるのが難しいことがあります。

建て替えて貸す

空き家を解体し、新たな賃貸住宅を建てる方法です。収益性が上がり、賃貸アパート経営も視野に入れられるため、長期的な資産運用の一つとしても考えられます。

しかし、初期費用がかかるため全ての人に向いているわけではありません。

更地として活用する

空き家を取り壊して土地を更地として活用する方法です。立地に合った活用法が選びやすく、一時的な活用方法にできるのが大きな魅力です。

しかし、解体費用がかかるので検討する際には慎重に進める必要があります。

これらの方法を検討する際には、具体的な状況やニーズに合わせて最適な選択をおこなうことが大切です。

また、建て替えを検討する場合は、収支計画を立てて慎重に進めることをおすすめします。

空き家活用の事例紹介

空き家を活用するビジネスモデルは、相続した空き家を資産として再活用したい方々に注目されています。以下に、成功した空き家活用の事例を紹介します。

古民家をレストランに改装

地域全体で空き家を活用する動きが広がっています。古民家をリノベーションしてレストランに活用する事例が増え歴史的な佇まいを生かしつつ、現代的な設備を導入し、独特の雰囲気を持つレストランが誕生しています。

コワーキングスペースとしての活用

空き家をリノベーションしてコワーキングスペースとして活用する例は多くあり、リノベーション後の空き家は、宿泊施設やシェアハウス、サテライトオフィスなどにも活用も注目が集まっています。

近年では手作り体験ワークショップを開催するための拠点として空き家を改装するケースもあり地域のにぎわいや経済に貢献する施設として生まれ変わります。

シェアオフィスやシェアカフェ

日本では、空き家の数が増加しており、同時に人口減少と少子高齢化が進んでいます。この状況を踏まえて、「空き家をシェアハウスとして活用する」ことは、社会的な問題を解決する一つの方法として注目されています。

築年数の古い建物をシェアオフィスやシェアカフェにリノベーションし、社会人だけではなく学生同士の交流の場としても活用されています。

個人向け貸倉庫

住宅として利用する場合ほど、立地条件は重要ではありません。倉庫として空き家を活用する場合は、毎日利用するわけではないため、立地条件はそれほど重要ではありません。

便利な場所にあることは望ましいですが、立地があまり恵まれない空き家でも十分に活用できる可能性があります。

その他の詳しい活用事例は以下記事にて解説していますのでぜひご覧ください。

空き家対策の法律と制度

深刻化している空き家問題を解決に繋げるために、さまざまな制度があります。空き家を放置することで、景観の悪化や犯罪リスクなどを引き起こすため、空き家対策の法制度が注目されています。

空き家対策のための法律と制度

空き家の適正管理を義務づける法律が新しくできました。 空き家をそのまま放置してしまうと、命令違反による罰金や特定空家への指定という制度も設けられています。

空家等対策特別措置法

「空家等対策特別措置法」は、2015年5月に施行されました。この法律によれば、「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上の危険となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にある空き家を指します。

「特定空家」に指定されてしまうと、固定資産税の優遇が無くなり、税金が最大6倍になってしまう可能性もあります。

もし所有している空き家に関して不安がある場合は、迅速に市町村に相談し、適切な対応を取りましょう。

参照：国土交通省・空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報
参照：国土交通省・「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な方針

地方自治体の支援制度

さまざまな地方自治体の支援制度があります。空き家を相続後に、どの様にすればよいか事前にさまざまな活用事例を参考にしてみてはいかがでしょうか。

国と各地方自治体は、地域の空き家を移住希望者に貸す「空き家バンク」制度や、地方の課題解決のための起業・創業支援など、移住定住支援施策を実施しています。

具体的な例

茨城県桜川市では、空家バンクを開設し空家を借りたい方、買いたい方を見つけるお手伝いをしています。新しい人が済むことで地域の活性化につながる取り組みの紹介を納税通知書にチラシを同封しています。

栃木県小山市では、小山市と小山工業高等専門学校が協定を締結し、小山高専の学生による空き家物件の調査・利活用の提案などを行っています。

空き家バンクに記載される物件は学生目線で小山市の住みやすさや課題を紹介しているので、小山市への移住者を考えている人に、分かりやすくアピールでき実際に成約につながっています。

参照：国土交通省・地方公共団体における空き家対策の実例集

地方移住は、リモートワークの普及により注目されているテーマですね。自然豊かな環境で家族との時間を大切に過ごすことは、多くの人々にとって魅力的な選択肢です。

空き家をリノベーションして活用することは、地域活性化に貢献する一つの方法です。国や地域の補助金を活用することで、空き家を新たな収益源に変えるだけでなく、地域全体の魅力を高められます。

あなたにぴったりな空き家の活用を進めていくには？

ここまで、空き家の相続に関して解説してきました。
あなたの空き家をどのように活用したいかイメージがついた方もいるでしょう。

ただ、どのように活用を進めていけばいいのかわからなかったり、そもそもまだ具体的なイメージがつかなかったりする方もいると思います。
最後に、効率的に空き家の活用を進めていくためのおすすめの方法をご紹介します。

依頼するメーカーの選択肢が多い

空き家を活用するにしても、一度解体するのかしないのかでも初手の動きが変わってきます。

解体する場合は解体業者に依頼する必要があるし、解体しなければリノベーションするなど、メーカーには様々な選択肢があります。

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