長寿になる高齢者住宅の間取りとは
長寿の秘訣=コミュニケーションを生む家。
高齢者といえばすぐにバリアフリーを考えます。けがをしない、スムーズに移動できる優しい安全な家づくりには必要なことです。
しかし高齢になると体の機能が退化してくるのでその機能を維持することも重要なことです。特にけがは思わぬところでしてしまい、回復することが難しくなります。
また急激な温度変化や気候の変わり目に気を付けねばなりません。対策として近年では進歩した様々な装置は設置することは可能です。
でもそんな過保護の状態をつくることだけが正解なのでしょうか?
最近では高齢者が本当に必要な体力を維持することや予防医療が重要との声が多くなっています。高齢者に免疫力がつき、生きがいが増し、生きる意欲の湧く住宅とはどんな家なのでしょうか?
その一つの方法は「絆」づくりといわれています。
ペットを飼って家族同様に暮らしたり、多くの友達とお話をしたり、若い世代と高齢者のコミュニケーションが何よりも大切だと言われています。高齢者の方の生きがいを探し、適切な方策を考えることが必要です。
例えば二世帯住宅ではお互いの家の中間に囲炉裏を設けて、親子孫3代が交わるスペースをつくることも一案です。高齢者自身が何かの世話をするような仕掛けをつくることも効果的です。ガーデニングで花を育てたり、庭にエサ台をつくって小鳥を呼び、その動きを楽しむようにするなども効果的です。
また、こんな「高齢者を元気にした」例もあります。その家はおばあちゃんの一人住まいでした。庭はあるのですがブロック塀で囲まれていました。そこでおばーちゃんはその塀の角の部分を取り払い、そこにベンチを置きました。
すると学校帰りの子どもたちが座ったり、話したりしています。おばあちゃんもお化粧してお菓子をもってその話に参加します。こうして、おばあちゃんは子供たちから元気をもらい、明るく元気に過ごしています。
キーワードはコミュニケーション。
それを生む家が長寿の秘訣なのです。
段差を利用した間取の効果
スキップフロアが生む楽しい居住感覚。リビングに段差を設けると、それまでになかった「お籠り感」が生まれ家族の親密度をあげる効果があります。
危険な要素もありますが室内の段差はある時はベンチになったり、ステージになったり、人間の行動に自己防衛能力を高めたりすることにも役立ちます。床には床暖房を設置し自然と床に座り込むように設計します。天井も高くなり開放感が生まれ、ちょっとした工夫が室内空間を変えてしまいます。
バリアフリーが必要になれば床を上げて対応しましょう。
また中2階部分に玄関や居室を設けた「スキップフロア」も楽しい居住感覚を生み出します。1階から2階へ行くにも途中に玄関フロアや居室があるため、踊り場ができ、階段が緩やかになります。1階に居室を作り、2階に天井の高いダイニングやリビングを置くと、見た目も面白く、実際にも楽しい暮らしが生まれます。若々しい家族に推薦です。
光と風を取り込む間取とは
天井の高さと床の高さに開口部を。
光を家の中に取り込むにはできるだけ高いところから入れると効果があがります。その方法として窓は天井の部分に近いところからつけると室内の壁で光が拡散し明るさが増し、雰囲気ががらりと変わってきます。
それに天井の高さから降り注ぐ光は空を背景にして純粋に美しいものがあります。建物の構造にも関係しますが建築家とよく検討されると良いでしょう。また床に近い窓は座った位置からの眺めがうまれ、低い位置からの外部の景色も楽しいものがあります。
風を室内に呼び込むには低い位置の開口部から高い位置の開口部に空気の流れをつくると効果的になります。床面から吹き上げる涼風は本当に心地よいものがあります。
風の出入り口を有効に作りましょう。デザイン的にも大きな窓を開口部にするよりも外壁を美しく見せることができます。室内的にも絵や飾り物がうまく配置でき、インテリア要素も高めてくれます。
執筆者:笹沢竜市