成功するリフォーム・総論編
リフォームにおける「耐震」(1)
「我が家が建った年代をしっかり把握する。
それをふまえて、弱った部分を確実に補強する、これが基本です」
日本中、いえ、世界中を大パニックに陥れた2011・3.・11「東日本大震災」から、ようやく1年が経ちました。
自然がもたらす想像を絶する破壊力を目のあたりにしたら、我々プロの建築家も、なにもできません。じつに無力です。一瞬にして消えてなくなる姿を見て、わたし自身、あらためて「家とは、何だったのか?」を、つくづく考えさせられています。
あの日を境に、今なお、日本の各地で連日のように大小さまざまな揺れが続きます。そして全国に危険なエリアが沢山報道されてきました。
「はたして我が家の『耐震』は、大丈夫か?」と、こんな不安に悩まされるのも、しかたがないことでしょう。でも、もともと地震大国の日本ということで、常に「耐震」は、家造りにおける重要なテーマに掲げられてきました。
だから根本的に日本の建築物は、地震に強いと言えるのです。今回の「東日本大震災」でも、家が破壊された原因のほとんどが巨大津波によるものです。また、以前に、関西を襲った「阪神淡路大震災」のときも、火災が原因で多くの家を焼失しました。古い木造家屋でも、地震の揺れに持ちこたえ、最後まで立っているケースがいくつも確認できます。
日本では、ごく最近はしっかりと「耐震」構造について研究がなされてきたということです。
この点については、まずは小さな安心を持ってください(ただ、建物だけでなく、液状化現象など地盤の影響が非常に大きいことを忘れずに)。
さて、「リフォーム」で「耐震」を考える場合、「新築」と少し違いがあります。
「新築」は、「基礎」から徹底的に「耐震」構造を考えて設計し、工事にと取りかかりますから、現代の技術レベルからすると、かなりの強度が期待できます。
しかし、「リフォーム」は、簡単に言えば、家の弱った部分を補強する作業しかできません。「リフォーム」の作業で、「基礎」から作り変えるわけにはなかなかいかないからです。「リフォーム」とは、家のすべてや、部分を新しく変える作業のことを言いますが、『「基礎」以外の』というただし書きがつきます。ここが「新築」の場合と異なる点です。
少し専門的な話になってしまいますが、地震に強い家かどうかのポイントは『「基礎」との接点」にあります。木造建築というのは、まず「基礎」があって、「土台」があって、「アンカー・ボルト」で固定されます。「基礎」の持つ重大性を語らないと話になりません。
戦後の「基礎」は、ほとんどが「布基礎(ぬのきそ)」という構造を採用していました。
逆T型をし、外周や室内の一部につなぎ合わせて家を支える構造です。
でも、近年の新しい建物は地盤にもよりますが変わってきています。支柱スタイルにせず、基礎のすべてを一体化した「ベタ基礎」と呼ばれるものなのです。
地震の揺れる振幅に対して、軸(点)で受けるより、マッチ箱構造(面)で受けたほうが、建物全体の変形が少なくすることができると見なされ、10年くらい前から、この「ベタ基礎」が全国的に主流となってきました。「下が狂わなければ、上も狂わない」という理論から、「ベタ基礎」のほうが地震に対して優れていると判断されてきたのです。
我が家の「リフォーム」を「耐震」という課題から造り変えたいときには、まず「地盤の状況を調べ」「自分の家が建てられたのが何年何月のいつだったか?」をしっかりと把握して、専門家の方によく相談することが先決です。
「布基礎」であっても、もともとは強いのですが、年代を経て弱ってきた部分がいくつもあります。
そうした弱った部分、特に、つなぎ目(ジョイント部)を「金物(かなもの)」で補強してやるという方法です。
『家が建てられた年代を専門家にしっかりと伝える→専門家の方に弱った部分を見極めてもらう→その弱った部分を補強する』。これが、基本的な「耐震」リフォームのやり方です。