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成功するリフォーム・総論編

リフォームを通して考える「バリアフリー」(2)

「介護やバリアフリーに対して、もう少しだけ、
柔軟できめこまやかな考え方を持ちましょう」

先の「バリアフリー」の項目で、少し日本に対して否定的な話になったので、こんな話をつけくわえておきます。わたしの知り合いの方に、ご高齢にも関わらず、いまだ2階を自分の寝室として愛用されている女性がいます。当然、毎日、階段の上り下りが必要です。手すりは設置ずみですが、つまずいたり、踏み外す危険を考えると、やはり心配です。

気をきかせたつもりで「寝室は1階のほうが安全ですよ。なんなら、わたしがリフォーム考えましょうか」と、提案を持ちかけたこともあります。
??でも、その方は「わたしは絶対に2階で寝る。ひとりで階段の上り下りができなくなるようじゃ、そのときはわたしももうダメだ」と、かたくなに拒否されるのです。
自分を甘やかせない強いこだわりがあるようで、その方にとっては、日々の大切な身体造りのひとつなのです。

階段の上り下りは、同じ距離を移動する水平歩行と比較すると、およそ10倍近いエネルギーを消費するといわれます。老化を防ぐには筋肉づくりが大切で、彼女のこだわりは間違っていないと思います。それにしても、自己流の最低限「バリアフリー」で高齢に立ち向かう、そんな彼女の生き方はすごくステキだと思います。

日本の高齢者たちも、人それぞれ、いろいろな考えを持って暮らしておられるはずです。福祉にたずさわる方々も、まずは「人」の生き方のことを考えるという姿勢で、柔軟に対応なさってはいかがでしょうか?世界を見わたせば、こんな国もあります。

早くから社会保障も整い、高齢福祉や介護のあり方がトップ・レベルということで、多くの国々から注目されるスウェーデンです。そんなスウェーデンが、今、大きく変わり始めているといいます。

症状にもよりますが、高齢者の方々に施設でなくふつうの家に住まわせるスタイルを提唱しています。炊事、洗濯、掃除など家事はもちろん、やれることは高齢者自身の手でこなせるようにという考え方です。

日本人からすれば、高齢者に「ひとりで勝手に生きなさい」とはなにごとかという意見も聞こえてきそうですが、それは違います。高齢者が、今後もよりよい人生を送るためには、何度も実験的な試行錯誤を繰り返して、その結果、自身の身体を動かして自由に生活するほうがいいのではないか、という発想の転換がなされたわけです。

老後は「バリアフリー」も整った介護施設で、なにもしないでのんびりと過ごすスタイルが完ぺきに充実してきたスウェーデンが、まさに一転です。まだすべての高齢者というわけではないでしょうが、すごく良い方向へ向かう転身だと思います。

何に対しても、ああでもないこうでもないと、さまざまに模索をくり返して、実験的な突拍子もないことも試みているようですね。でも、良いという結論に達したときは、その方向に向かうことも多々あります。ようは考え方ひとつだと思うんです。

日本も、今後ますます高齢化社会が進行するいっぽうです。
「介護やバリアフリーに対しても、もう少し、柔軟な考え方でいきましょう」ということだと思うんです。もちろん我々建築関係者も、リフォームを通して、介護や「バリアフリー」に対する、より質の高い建築設計を心がけるように務めるつもりです。

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